光源で配光を扱う

  • 光源で配光を扱う
  • 配光とは?
  • Shade3Dでの配光とルーメン値の関係


Shade3D Professional版のグレードでは、光源として「配光」を使用できます。

Shade3Dでの配光の読み込み、配光とは何か、ということを説明していきます。
今回使用している配光曲線や配光をレンダリングした画像は、筆者が開発中のShade3D上のウィジットを使用したものです。
これらについては別途説明予定にしています。

配光をシーンに読み込む

配光は拡張子IESのファイルを使用します。
なお、IESファイルはテキスト形式で記載されています。
ツールボックスの「作成」-「光源/カメラ」-「配光」を選択し、
図形ウィンドウでドラッグして向きを指定します。

続いてファイルダイアログボックスが表示されるため、IESファイルを選択します。

ブラウザで配光を選択すると、形状情報ウィンドウで配光をプレビューできます。

また、形状情報ウィンドウの「IES属性」からIESファイルを読み込み、保存することができます。

配光とは ?

配光とは、光源から光がどの向きにどの強さで出ているか表すものです。
配光は光度( 単位 : cd(カンデラ) )の分布になります。
オブジェクト光源の点光源やスポットライトの場合は、全方向に同一の光度になっています。
配光を使った場合は、向きにより光度を変化させた指定が可能です。

この配光情報はIESファイルに保存されています。

光が広がる向きと光度の値を極座標の曲線で表したものを配光曲線と呼びます。
以下は配光曲線の例です。

光源の中心が極座標の原点位置になります。
下向きを角度0とし、0 ~ ±180度の光度を表現しています。
上記画像は軸対称ですが、非対称の表現も可能です。
この配光曲線の場合、ランプ光束1000lmあたりの光度(カンデラ)を表しています。
実際の光度は以下の式で計算されます。

I = (読み取り光度 * ランプ光束) / 1000

この式での「ランプ光束」は「全光束」とも呼ばれます。
これは前回の「ルーメン値をShade3Dのシーンで扱う」で説明した照明器具のルーメン値になります。
実際は器具の特性(「器具効率」と呼ばれます)により、ルーメン値は下がることになります。
この配光を照度計算して視覚化すると、以下のようになります。

Shade3Dで配光を選択したときの形状情報ウィンドウで表示されているプレビューは、この情報になります。

この軸対称の配光は、Shade3Dの回転体のように軸を中心にぐるっと同じ明るさになっています。
少し強引ですが、立体にすると以下のような光の広がりになります。

軸対称の場合は、Shade3Dの回転体での線形状のように垂直面(断面)での光度のリストを1つだけ持つ構造になります。

なお、Shade3Dのオブジェクト光源の点光源やスポットライトは配光でも表すことができます。

すべての向きで同じ光度の場合(点光源)

点光源のようにすべての向きで同じ光度の場合は、配光曲線は以下のように円になります。

視覚化すると以下のようになります。

スポットライトの場合

スポットライトは、点光源の表現で特定の角度から光度が0になる表現になります。
120度のスポットライトの配光曲線は以下のようになります。

視覚化すると以下のようになります。

軸対称ではない配光の表現

配光では軸対称ではない表現も行えます。
以下の配光曲線の場合は、軸の0度を中心に-180 ~ +180度で光度が非対称になっているのを確認できます。

曲線の組み合わせは、垂直面の断面と90度回転させたときの断面の2つを表示しています。
視覚化すると以下のようになります。

この場合、IESファイルでは複数の断面のデータを持つ状態になります。
概念としては以下の図のようになります。

光源の軸が鉛直下向きにあり、断面が90度ごとに4枚あります。
この断面数はIESファイル内で指定することができます。

Shade3Dでの配光とルーメン値の関係

Shade3Dで配光を配置する場合、IESファイルで与えられる光度情報と、ルーメン値の「明るさ」を使用することで実際の明るさを調整します。

ここで、光度は単位は「カンデラ(cd)」、
配光光源をルーメンの単位にした場合は「明るさ」の単位は光束の「ルーメン(lm)」です。
IESファイルを使用する場合はランプ光束1000lmあたりの光度値、という条件が付きます。
このときの「ランプ光束1000lmあたり」の情報は、IESファイル内で変更可能です。
前述の式より、光度(I)とランプ光束での光度値は以下のように計算できます。

I = (読み取り光度 * ランプ光束) / 1000

また、光度と光束は「光源で使われる用語/明るさの単位」の計算式「I = Φ / ω」より(Iが光度、Φが光束、ωが立体角)、
比例関係になっています。
これより、配光からの情報(光度)と配光光源の「単位」を「ルーメン」としたときの「明るさ」を乗算したものが、
Shade3Dの配光使用時に出力される明るさになります。

Shade3Dの配光では、ランプ光束1000(lm)あたり79.5774(cd)を使うことで配光を使用しない点光源/スポットライトと明るさが一致するようでした。
これは以下の手順で計算できます。
前回の計算にならって無限遠光源を基準にします。
1000mmの高さの直下照度を100k(lx)の条件でルーメン値を計算します。
光度I(単位:cd) の光が距離R(単位:m)だけ離れた位置での直下照度E(単位:lx)のとき、以下の式になります。

E = I / (R^2)

100k(lx)とR = 1より、100k(cd)と計算できます。
光束と光度の式より「I = Φ / ω」で立体角を全球とした場合、「ω = 4π」。
「Φ = I * ω = 100k * 4π ≒ 1256637.06(lm)」となります。
「I = (読み取り光度 * ランプ光束) / 1000」の式に当てはめると、「100000(cd) = (読み取り光度 * 1256637.06(lx)) / 1000」となります。
これの「読み取り光度」を解くと、79.5774となります。

例として点光源と配光を同じ明るさにします。
以下は点光源で100000(lm)を指定した場合。

ランプ光束1000(lm)あたり79.5774(cd)の配光を指定し、配光光源で同じ100000(lm)を指定した場合。

このときの2つの光源をレンダリングすると、光の広がり方と明るさは一致しました。

参考までに、これをIESファイルで記載すると以下のようになります。
詳しいフォーマットの説明は省き、要点だけを記載します。


IESNA
TILT=NONE
1 1000 1 3 1 1 2 
0 0 0
1 1 0
0 90 180
0
79.5774 79.5774 79.5774

3行目の「1000」が「ランプ光束1000(lm)あたり」の指定。
6行目の「0 90 180」が垂直面での角度の指定。
8行目の「79.5774 79.5774 79.5774」が角度ごとの光度値(cd)の指定になります。

説明が長くなるため、いったんここで区切ります。
次回、配光(IES)とランプ光束(全光束)が与えられたときに、Shade3Dの配光では「明るさ」に何を指定すればよいのか、
というのを照明器具のカタログから得られる情報や照度計算を使って読み解いていきます。

カテゴリー: 照明器具を作る