BIM/CIM

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  • IFCとは?


今回は、建物をモデリングする際の「BIM/CIM」を意識したモデリングを考えていきます。

Shade3Dのような3DCGツールは、形状をモデリングしてマテリアル(表面材質)を与えてレンダリングする機能があります。
これらのツールは「DCC(Digital Content Creation)ツール」とも呼ばれます。
また、Shade3DのProfessional版の場合は「CADモード」で厳密な寸法を指定したNURBSでのモデリングを行うことができます。

現実に建物を施工する際は、ここからさらに現実世界の物理的な情報を与える必要が出てきます。

Shade3DはBIMソフトウェアではないため、BIMのための情報を付加する機能はありません。
今回のチュートリアルは基礎知識としてBIM/CIMについて記述し、現実に建物を施工する場合にどの部分にどのような情報を与えるか、ということについて模索していきます。

なお、筆者はこの分野は専門ではないため、BIM/CIMの導入の知識を3DCGの立場から紐解いていく、という内容にしました。

3DCGからBIMを理解する

BIM(Building Information Modeling)とは、コンピュータ上に作成した3次元の形状情報に加え、
室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げ等、建築物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築することです。
国土交通省の「官庁営繕事業におけるBIMの活用」( https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000094.html )」からの引用になります。
BIMのガイドラインについては国土交通省で用意されています。
BIMにより、設計から実際に施工するにあたっての情報共有を行うことになります。
この情報共有により全体のワークフローの可視化、効率化につながります。

BIMについて、3DCGサイドからもう少し掘り下げて解説していきます。

モデリング+レンダリング

Shade3DのようなDCCツールの行える範囲は以下のような流れになります。

モデリングは、3Dモデル(ジオメトリ)の作成、マテリアル(表面材質)の割り当て、テクスチャイメージの作成を行います。
これに対して光源を与えてライティングを行い、最終的にレンダリングで絵を作ります。
この工程は完成図を作っているにすぎません。
ここまではコンピュータ上のデジタルモデルとして完結できる範囲になります。

3DCGとしてのマテリアル

モデリングの際にマテリアルを与えています。
ドアを例にとると、ドアの正面/ドアノブ/ドアガラスのほか、枠部分やドアの内側などさまざまなマテリアルで構成されています。

これはあくまでも「見た目」(ビジュアル)としての情報になり、実際の建物の施工では「指定メーカーの指定の型番のドア」を与えることになります。

BIMモデル

モデリングの情報から「BIMモデル」を考えていきます。
「BIMモデル」とは、コンピュータで作成された3次元モデルに室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げ等の建築物の属性情報を与えたものを指します。
※ Shade3DではBIMのための属性を与える機能はありません。


先ほどのドアの例で例えると、ドアに対して属性が与えられます。
寸法情報や詳細説明も属性として含まれます。
ドアなどの形状は「BIMオブジェクト」と呼ばれ、BIMソフトウェアではライブラリ化されています。
玄関部分を見ると、外壁とドアが見えます。

部屋の内側から見ると、床、壁、床と壁の角の幅木、天井と壁の角の廻りぶち、窓、などが存在します。

これらの情報がBIMの属性として与えられます。
その他、階段や柱、梁などの属性があります。
建物の要素については「建物の構成要素と立体化(基礎のモデリング)」もご参照くださいませ。

また、3DCGとして見た場合は目には見えないですが「部屋」の空間についても属性を与えています。

これは「空間オブジェクト」と呼ばれます。

これらのBIMモデルの属性により、窓はいくつありどの場所に配置するか、どのメーカーのものを使用するか、などの確認、
BIMソフトウェアで床や柱だけ可視化して施工時の手順に合わせた確認、など行うことができることになります。

IFC : BIM情報を渡すための中間フォーマット

同じBIMソフトウェアを使っている場合は相互に情報を渡すことができるのですが、実際は同一ソフトウェアが使われているとは限りません。
そうなると「データを相互に渡しあうことができない」という問題が出てきます。
そこで相互にデータを渡すために「IFC」という中間ファイルが使用されます。
IFC(Industry Foundation Classes)とは、BIMのデータを扱うことができるオープンなフォーマットです。
ここには3Dモデルの情報と、BIMモデルの属性情報が含まれます。
一方、それぞれのBIMソフトウェアが管理するBIM情報が含まれるファイルは「BIMオリジナルファイル」「ネイティブファイル」のように呼ばれます。
IFCファイルはBIMソフトウェアからファイルとして出力して扱うことになります。

IFCは buildingSMART International ( https://technical.buildingsmart.org/ )により管理されています。
国際標準の規格になります。

IFCファイルはすべてのBIM情報を持たせることができるわけではないため、BIMオリジナルファイルが依然として必要になります。
IFCについては「BIM/CIM」カテゴリの最後で詳しく説明する予定です。

CIM

BIMは建物情報を与える考え方になりますが、これを拡張して土木(道路、橋梁、トンネルなど)でも活用したものをCIM(Construction Information Modeling)と呼びます。
CIMについては国土交通省の「BIM/CIM関連」( https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000037.html )の情報もご参照くださいませ。
昨今ではBIMとCIMを分けずに「BIM/CIM」として、建物と土木の構造物を統一して扱うように名称が統一されているようです。

以下は橋脚の内部構造になります。

橋脚はコンクリートで覆われており、中身は鉄筋で組みあげられた配筋が配置されています。
この場合「鉄筋」の属性が与えられています。
CIM情報についてもIFCファイルを使用することができます。

BIM/CIMの活用場所

BIM/CIMは、現実世界での建物や構造物を施工する場合の活用はもちろんですが、昨今では仮想世界(VR)の構築でも意識され始めています。
ここで、国土交通省が主導する「Project PLATERU」( https://www.mlit.go.jp/plateau/ )を紹介しておきます。
このプロジェクトでは現実の都市を元にして「3D都市モデル」を構築しています。
また、3Dモデルはオープンデータとして公開されています。
これにより、仮想的(VR)な利用だけでなく現実世界と関連付けてAR/MRとして活用することも可能になります。
また、現実の都市のサイズで作成されているためシミュレーションにも使用できそうです(日照シミュレーション、災害時のハザードマップの検証など)。

この3Dモデルは、都市をLOD(Level of Detail)という概念で扱っています。
距離が離れるにつれて粗く、近づくと詳細な3Dモデルに切り替える仕組みを「LOD」と呼びます。
もっとも粗いLOD1の場合は単純な直方体で建物などを表現、LOD2になると3Dモデルももう少し詳細になりテクスチャをマッピング、
LOD4になると建物内部の情報をBIMとして与えることができ、このときにIFCの使用が想定されています(実際はIFCからCityGMLへの変換)。

これらの情報については「Project PLATERU」の「資料ライブラリー」( https://www.mlit.go.jp/plateau/libraries/ )にドキュメントがあります。
以下はWebブラウザで表示できる「PLATEAU VIEW [Ver.1.0]」のキャプチャになります。

「3D都市モデル」を用いることで、普段は縁がない3DCG分野からでもBIM情報の付与を模索することができそうです。

今回はここまでです。
さらっとではありますがBIM/CIMについて説明を行いました。
まだ干渉については説明していないため(干渉チェックはShade3Dの機能としてあります)、これは後々詳しく解説していきます。
次回は、BIM/CIMを意識した建物モデリングに入る予定です。

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