- BIMを考慮した建物に必要な要素
BIMを意識した建物モデリングを行います。
ここでは「Professional」向けとしていますが、BIMの知識やモデリング工程についてはすべてのバージョンのShade3Dで共通で使用できます。
BIMの理解を深めるという目的のため、規模が大きくない集合住宅をモデリングし、どのような属性が関連付けられるのか確認していきます。
※ Shade3DではBIMのための属性を与える機能はありません。
BIMについて参考にする情報
BIMについては、オープンフォーマットである「IFC」を理解すると周辺を把握できそうです。
buildingSMART International の「 https://technical.buildingsmart.org/ 」より、BIMで必要な構成を理解するようにしました。
日本語のサイトは、一般社団法人 building SMART Japan ( https://www.building-smart.or.jp/ )が参考になります。
Shade3DでのIFCファイルの使用(「BIM/CIM 設計照査ツール」で使える機能)については、チュートリアル「BIM/CIM」カテゴリの最後で説明します。
BIMを考慮した建物に必要な要素
ここではBIMを考慮した場合、建物の情報としては何が必要かというのをもう少し詳しく記載していきます。
ここで記載した情報以外も存在します。
これらはあくまでも参考としてご参照くださいませ。
以下のような要素があります。
要素ごとに階層化されています。
IfcXXXXという記述は、IFCファイル内で個々の形状を分類化する識別用の名前です。
IFCファイルでは、個々のIfcXXXXに対して名前や説明のテキストを与えることができます。
IfcProject : プロジェクト情報
建物を施工するにあたってのプロジェクト情報です。以下のような情報を持ちます。
- プロジェクト名
- 説明
- 設計者
- 設計日
- 使用するBIMソフトウェア
- 3Dモデルの単位
- プロジェクトの北方向
IfcSite : 位置の情報
地球上のどの位置に配置するか、という情報です。
- 緯度
- 経度
- 高度
- 敷地面積
なお、建物の3Dモデルは原点(0, 0, 0)を中心に配置します。
ここで指定した緯度/経度/高度の位置に移動させると、地球上の絶対位置に配置されることになります。
北方向はプロジェクトの情報より参照されます。
IfcBuilding : 建物情報
建物の情報です。
- 建物の名前
- 建物の種類
- ランドマーク(目印となる建物)かどうか
- 階の数
IfcBuildingStorey : 階の情報
水平の階ごとに要素を分けていきます。
これは空間オブジェクトになります。
空間オブジェクトは目に見えない空間を表します。
- 標高
IfcSpace : 部屋の情報
部屋の情報です。
これは空間オブジェクトになります。
- 部屋の名前
- 入居者数
- 空間のサイズ
建物を構成する要素
建物を構成する要素です。
これは実体を持つオブジェクトになります。
- IfcSlab : 床
- IfcWall : 壁
- IfcColumn : 柱
- IfcBeam : 梁
- IfcCovering : 天井
- IfcStair : 階段
- IfcDoor : ドア
- IfcWindow : 窓
- IfcRoof : 屋根
- IfcFurnishingElement : 家具類
これ以外も建築物の形状を分類するための要素が存在します。
それぞれにサイズを指定することができ、3Dモデルと関連付けられています。
例えば、ドアのメーカーや型番は「IfcDoor」内の属性として与えられることになります。
改めて、BIMに必要な情報とは?
BIMで何が必要なのかをIFCファイルの構造より見ると、施工に必要な形状/部品ごとのより詳細な情報、と受け止めることができそうです。
3DCGツール/CADツールの3Dモデルだけでは情報が足りていない、というのが分かるかと思います。
もちろんこれだけではなく、施工の時の工程管理、意匠、図面、完成図などのあらかじめチェックする必要がある事柄、
物理的な干渉が起きていないかのチェック(チェックシートの作成)、など書類ベースの情報が必要となります。
詳しいガイドラインは、国土交通省の「官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン」( https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000094.html )をご参照くださいませ。
モデリングする建物の全体像
仮想的な3Dモデルとして、2階建てで構成される4戸の集合住宅をモデリングしていきます。
1戸分を以下のように設計しました。
上記は寸法に壁の厚さを入れていません。
1畳をアパートやマンションでよく使用される団地間(1700 x 850 mm)の大きさとしています。
2階分の集合住宅は以下のように設計しました。
中央に階段を設けています。
階段をはさんで2つの部屋同士は左右対称の配置、1階と2階の個々の部屋は同じ間取りとしました。
1階を101と102号室、2階を201と202号室としています。
モデリングには要点のみを書いていくようにします。
建物のモデリングについてはチュートリアルの「建物を作る」、
「キッチンを作る」などもご参照くださいませ。
今回はモデリングのみが目的ではないため、少し手順が異なります。
施工を考慮するために以下の点に注意するようにしました。
- 壁は面ごとに分ける
- 各オブジェクトは立体として閉じている形状にする(厚みがあること)
- 要素ごとで重なり(干渉)がないようにする
- 宙に浮いている形状がないようにする
- 階を意識してグループ化
また、モデリング時の寸法は以下のようにしました。
名称 | 寸法(mm) |
---|---|
基礎高 | 400 |
床高 | 610 |
幅木の高さ | 50 |
廻りぶちの高さ | 30 |
壁厚 | 150 |
階高 | 3010 |
今回1戸分の空間をモデリングします。
下書きの部屋の間取りを作成
「閉じた線形状」を使ってY=0の位置に部屋の間取りを作成しました。
個々の空間ごとに1つの「閉じた線形状」を使用しています。
基礎
基礎高は400(mm)としています。
また、壁厚を150(mm)としているため、ポリゴンメッシュの長方形を配置した後に「厚み」を使って「両面」として「距離」75(mm)で厚みをつけました。
これで壁厚が75+75(mm)の直方体になりました。
この作業を合計4辺に対して行います。
1戸の間取りが上から見ると長方形のため直角の2辺のみモデリングして、反対側はコピー&ペーストで複製しました。
角部分に重なりがあるため調整します。
上面図で操作します。頂点移動で以下のようにしました。
すべての角に対して同じ作業を行います。
また、内側の部屋の壁に合わせて直方体を配置しました。
1枚板のポリゴンメッシュを配置後、「厚み」を使って150(mm)の厚みを付けています。
配管用にところどころに開口部を設けていますが、ここでは適当な指定を行いました(厳密なものではありません)。
基礎はこれで完了です。
床と壁
「床高」610(mm)、「階高」3010(mm)としているため、床と壁は以下のような高さになります。
床は地面から610(mm)の位置、階高は地面から3620(mm)の位置になります。
2階の床の位置は、地面から3620(mm)の位置にあることになります。
1階の天井はこれより低い位置にあります。
床と基礎高の差分は610-400=210(mm)となり、この部分で床下として直方体の木を横方向と縦方向に配置しました。
間取りに沿って壁を配置していきます。
まずは窓やドアの開口を行う前の壁をモデリングします。
1枚板のポリゴンメッシュを間取りに合わせて作成し、「厚み」で「両面」で75(mm)の距離(75+75(mm)の厚みとなる)を適用します。
壁の高さは「階高(3010(mm))+床高(610(mm))-基礎高(400(mm))=3220(mm)」としました。
「幅木の高さ」50(mm)の寸法を使って、壁に張り付くように幅木を配置します。
床の高さ(Y=610(mm))から50(mm)の高さで直方体を配置することになります。
なお、幅木/廻りぶちは部屋や廊下の内壁側のみに配置される要素になります。
床が分かりやすいように、仮にY=610(mm)の位置に「閉じた線形状」を配置しました。
幅木は高さ50(mm)、厚み8(mm)としました。
分かりやすいように幅木の表面材質を茶色にして以下のようになりました。
天井は床高から2700(mm)の位置に配置するとしました。
天井が分かりやすいように、仮にY=610+2700=3310(mm)の位置に「閉じた線形状」を配置しました。
廻りぶちは高さ30(mm)、厚み8(mm)としました。
分かりやすいように廻りぶちの表面材質を茶色にして以下のようになりました。
この「壁」「幅木」「廻りぶち」を1つのパートに入れて、これを個々の壁として複製して再利用します。
以下のように壁を配置しました。
この段階では、壁が垂直に交差する部分などで重なりがある状態です。
部屋、廊下、玄関などの内側の壁には「幅木」「廻りぶち」を設けてます。
浴室の内壁は「幅木」「廻りぶち」はありません。
上面図で重なりがある部分を調整してきます。
この作業は、基礎の時と同じ工程になります。
上面図で以下のようになりました。
透視図では以下のようになりました。
玄関も壁で塞いでいます。
長くなりましたのでここで区切ります。
この部分は一般的なモデリングですが、干渉や宙に浮いている形状などがないように注意してモデリングする、という点が今までとは異なる点になります。
次回、続きをモデリングしていきます。