- IFCとしての構成
※ ポリゴンメッシュのモデリングになるため、Professional版でなくてもモデリングを進めることができます。
これまでモデリングした建物を参考に、建物の各要素がBIMで使われるIFCファイルのどの要素になるかというのを確認していきます。
前回は以下のような建物のモデリングを完成させました。
なお、Shade3D ver.21段階ではShade3Dでモデリングした形状に対してBIM/CIMやIFCの情報を与える機能はありません。
IFCファイルを読み込んで属性を編集する(3Dモデルは編集できません)オプションとして「BIM/CIM 設計照査ツール」( https://shade3d.jp/ja/products/shade3d/ver21/bimcim_tool.html )に付属の「IFC情報」が存在します。
今回はこのツールの解説は行いません。その前に知っておいてほしい情報を説明するようにます。
3Dモデルとしての建物の階層構造
Shade3Dのブラウザでは、パートごとに建物の要素を分けて入れています。
これらの要素は、IFCファイルに収まる構成を意識して以下のように整理しました。
集合住宅全体を入れるパートを「集合住宅」とし、その中にすべての建物の要素を入れています。
これは3Dモデルとしての階層になり、BIM(IFC)の場合は空間としての接続情報も必要となります。
BIMを考慮した構造を表す場合は、Shade3Dのブラウザでの3Dモデルの構造と同一になるというわけではない点に注意する必要があります。
IFCのバージョン(スキーマ)
IFCでは、IfcProject/IfcSite/IfcBuildingなどの「IFC要素」を階層化して建物の構造を理解できるようになっています。
これをShade3Dのパートの階層構造に見立てて、それぞれどの部分がどのIFC要素に値するかというのを見ていきます。
IFC要素の種類については、
buildingSMART International の「 https://technical.buildingsmart.org/ 」より「IFC 4」( https://standards.buildingsmart.org/IFC/RELEASE/IFC4/FINAL/HTML/ )の情報を参考にしました。
この「IFC 4」というのはIFCのバージョンです。スキーマと呼ばれます。
「IFC 2×2」「IFC 2×3」「IFC 4」「IFC 4.1」などがあります。
IFCファイルでは、どのスキーマを参照しているかというのが明記されています。
国土地理院より「3次元屋内地理空間情報データ仕様書(案)」( https://www.gsi.go.jp/common/000212582.pdf )がIFCの構造の説明で分かりやすいです。
建物の要素ごとにIFCファイルの要素を割り当て
モデリングした建物に対して、IFC要素がどの箇所に値するのかということを考えていきます。
以下のような要素で構成されます。
全部を列挙すると量が多くなるため、分かりやすい部分のみを取り出しました。
IfcBuilding : 建物全体
建物全体のパートをブラウザで選択します。
形状情報ウィンドウの「バウンディングボックス」の「サイズ」は19447 x 7798 x 8000(mm)となっています。
小数点以下は四捨五入しました。
なお、以降の要素は、サイズ情報を属性として保持することになります。
IfcBuildingStorey : 基礎
基礎は「階」の要素である「IfcBuildingStorey」でくくり、この中に基礎を構成するコンクリートのオブジェクトを入れました。
その中のコンクリートの低い区切りは「IfcWall」としました。
IfcBuildingStorey : 1階
1階は101号室と102号室、廊下、階段が存在します。
「階」を「IfcBuildingStorey」でくくり、さらにその中に要素を入れていくことになります。
IfcSlab : 廊下
廊下はコンクリート部を「IfcSlab」としました。
Slabはスペースを垂直方向に囲む構造のコンポーネントで、下部サポート(床)もしくは上部構造(屋根)を提供できます。
廊下は四方が壁で囲まれているわけではありませんが、ここに空間が存在します。
また、モデリングではこの空間を配置していません。
ですが、BIMの場合は必要な要素になります。
IFCでは空間オブジェクト「IfcSpace」として指定します。
IfcStair : 階段
101号室と102号室の間にある、二階に通じる階段です。
階段は「IfcStair」を指定しました。
IfcSlab : 床
床は「IfcSlab」を指定しました。
床は部屋ごとに個別に与えています。
IfcWall : 壁
壁は「IfcWall」を指定しました。
壁は、モデリングした壁自身+幅木+廻りぶちを1つの要素としました。
以下で1つ分のIfcWallとしています。
IfcCloumn : 柱
柱は「IfcCloumn」を指定しました。
IfcCovering : 天井
天井は「IfcCovering」を指定しました。
IfcDoor : ドア
ドアは「IfcDoor」を指定しました。
この集合住宅の場合は、玄関ドアと室内ドア(引き戸含む)があります。
IfcWindow : 窓
窓は「IfcWindow」を指定しました。
IfcRailing : 手すり
ベランダや廊下の「手すり」は「IfcRailing」を指定しました。
IfcBuildingStorey : 2階
2階は201号室と202号室、廊下が存在します。
構成はほぼ1階と同じになります。
IfcBuildingStorey : 屋根
屋根も「階」として「IfcBuildingStorey」を指定し、その中に屋根を入れました。
屋根自身は「IfcSlab」を指定しています。
IFCでの構造
以上ざっくりとですが、集合住宅の部品がIFCのどの要素に対応するのかを列挙しました。
構成としては以下のようになります。
2階は省略していますが、1階と同じ構成です。
空間と接続
「部屋」や「廊下」は、3Dモデルでは表示されないため要素として入れていませんでしたが「空間」が存在します。
BIMではこれが大事な要素になります。
IFCでは「IfcSpace」で指定します。
以下は、101号室だけを取り出しました。
全部でベランダ含めて9部屋あります。
この「IfcSpace」は、隣り合う壁(IfcWall)、床(IfcSlab)、天井(IfcCovering)、柱(IfcColumn)、窓(IfcWindow)、ドア(IfcDoor)、などと接続されます。
この接続情報もIFCは保持しています。
また、壁(IfcWall)と開口を設けて埋め込まれているドア(IfcDoor)や窓(IfcWindow)も互いに接続されています。
なお、「IfcZone」を使って空間をグループ化できるようです。
戸別にグループとしてまとめておくほうがいいかもしれません。
これらの空間や接続の情報は3DCGツールやCADでは出てこない要素で、BIMソフトウェアの必要性が見えてきます。
改めて、IFCの構造の図に「IfcSpace」を入れて以下のようになりました。
以上で3DCGのモデリングからIFCを通してBIMを理解する、ということをざっくりですが一通り説明しました。
実際はもっと必要な情報が多いです。
3DCG/CADとは異なる考えが入ってきた、というのが見えてくればそれなりに理解が進んだと思ってもよいのかもしれません。
現状のShade3D(ver.21段階)では、これらの「BIM/CIM」を扱う機能は存在しません。
BIM/CIMを扱うこと自体が別分野のソフトウェアの範囲ですので3DCG/CADにこのような情報は必要ないのですが、
「BIM/CIM 設計照査ツール」を使用するにあたってはこのあたりの知識は必要になってきます。
これで、BIM/CIMについて初歩的な背景を説明しましたので次回は別カテゴリに入ります。
次回は、冒頭で記載したver.21のオプションである「BIM/CIM 設計照査ツール」( https://shade3d.jp/ja/products/shade3d/ver21/bimcim_tool.html )について役割や使い方などを書いていく予定です。