ラジオシティ

室内シーンのレンダリング」で説明をしていますが、改めまして。
Shade3Dの以前からあるレンダリング手法として「ラジオシティ」があります。

ラジオシティとは ?

「ラジオシティ」は光源からのエネルギーを、熱力学的に処理していく大域照明のレンダリング手法の1つです。
シーン内を光が乱反射したときに、それぞれの面が受けるエネルギーを計算して、レンダリングに反映します。
この手法は古い技術となり、いくつかの制約があります。

ラジオシティの利点

ラジオシティを使用すると、形状の面ごとにエネルギーを前処理で計算し、その情報を元にレンダリングに反映します。
シーン内の形状の配置や光源の明るさなどが変化せずに、カメラでの見え方のみ変わる場合、
一度ラジオシティのエネルギー計算を行うと、その後は計算された情報を使いまわすことができます。
レンダリング自身は直接照明のみのレイトレーシングで行われるため、レンダリング計算が速いです。
また、レンダリングサイズを変更した場合も、間接照明の再計算は必要ありません。

室内のような間接照明が充満するシーンの表現に向いています。

ラジオシティの制約

ラジオシティで使用できる光源

  • 点光源
  • 無限遠光源
  • 無限遠光源の天空光
  • スポットライト
  • 平行光源
  • 配光光源
  • 面光源
  • 線光源

環境光や背景の「光源としての明るさ」には対応していません。

パストレーシングで確認用のシーンをレンダリング

まずは確認用にパストレーシング+パストレーシング(手法:パストレーシング、大域照明:パストレーシング)でレンダリングしました。
直接ラジオシティでレンダリングする場合はこの工程は不要です。

640 x 480ピクセルで02:37のレンダリング時間となりました。

太陽としての無限遠光源1つと、右から面光源で光が差し込むようにしています。
レンダリング設定の「その他」タブの「レイトレーシングの画質」を50としています。
「大域照明」タブの「拡散反射カットオフ」を0.0、「反射係数」を2.0としています。
イラディアンスキャッシュ」を使用しています。

カメラの位置や向きを変えてレンダリングする場合、同じくらいのレンダリング時間がかかることになります。

ラジオシティを使用する

ラジオシティウィンドウでの調整

メインメニューから「表示」-「ラジオシティ」を選択して、ラジオシティウィンドウを表示します。

左上の三角マークを選択すると、ラジオシティの設定が表示されます。
「計算」タブを選択し、「メッシュ間隔」の「初期間隔」(デフォルト750)と「最小間隔」(デフォルト150)を調整します。
ラジオシティのレンダリングでは、面ごとに光のエネルギーを格納していきます。
そのため、面を細かくすることで精度が上がることになります。
メッシュ間隔を小さくすると精度は上がりますが、計算時間とメモリ消費量が増えます。
「初期間隔」の指定により、シーン上の面を指定のサイズで分割します。
値が小さくすることでより正確な表現に近づきます。
「最小間隔」のサイズになると、面分割は打ち切られます。
ここでは「初期間隔」を100、「最小間隔」を20としました(シーンによって変わります)。

また、露出に関しては色補正で手動調整しますので、
ラジオシティウィンドウ下の露出調整の「自動」チェックボックスをオフにしています。
ラジオシティの設定を閉じて(三角マークを選択)、ラジオシティウィンドウの「開始」ボタンを押します。

計算が終了するまで、このシーンでは2分ほど時間がかかりました。
このシーンはほとんどが間接照明で満たされるためラジオシティウィンドウでは真っ暗になっていますが、
ラジオシティの設定で「表示」タブを選択して「ソリッド」チェックボックスをオフにすると、分割状態を確認できます。

レンダリング設定での調整

メインメニューの「表示」-「イメージウィンドウ」を選択してイメージウィンドウを表示します。
レンダリング設定を表示し、「大域照明」タブの「大域照明」ポップアップメニューで「ラジオシティ」を選択します。

レンダリングを行うと、以下のようになりました。

640 x 480ピクセルでレンダリング時間は19秒です。
パストレーシングのレンダリングとほぼ同じように間接照明が与えられました。
ただ、若干暗がり部分が荒い箇所があるようです。

ラジオシティの前処理計算を一度行うと、レンダリングサイズを変更した場合でもレイトレーシングとしてレンダリングしたときと速度差は変わりません。
また、視点を変えた場合でもレンダリング時間は変わりません。
この部分はラジオシティの利点と言えます。

光源を変えた場合、シーン内の形状が移動した場合は、ラジオシティの前処理計算を再度行う必要があります。

ラジオシティは利点が多いですが制約もあり、ラジオシティのためのシーン設定のノウハウは結構必要になるかもしれません。
また、背景のIBLには対応していないため、野外シーンでは使用が限定されます。
そのため、より大域照明を使いこなすにはパストレーシングを使用するほうがいいかもしれません。

今回はラジオシティに関することを説明しました。
次回は、すでに作例として何回か説明はしていますが「リニアワークフロー」について改めてまとめる予定です。

カテゴリー: レンダリング